歴史的な建物の再生・活用・保存の道筋をさぐる
現在、日本各地で歴史的な景観や建造物の活用および保存する活動が広がっています。たとえば、有名な景勝地では世界遺産への登録活動をしています。
歴史的な建物を保存するには、国指定の「重要文化財」と、より地域や所有者の思いに密着した「登録有形文化財」とがあるようです。
さらには、もうひとつ「ナショナルトラスト」という考えに基づいた保存もあるようです。これは、国や地方行政ではなく、一般市民が中心となって募金を集めて土地や建物を買い取り、修復し保存していくものです。
また、文化財は市町村の条例によって指定することもできるそうですが、国の重要文化財との二重指定はできないそうです。
以下に、「重要文化財」と「登録有形文化財」の概要を紹介いたします。「ナショナルトラスト」に関しては、別の機会に紹介したいと思います。
<重要文化財>
重要文化財とは、日本に現存する有形文化財のうち、歴史上・芸術上の価値の高いもの、または学術的に価値の高いものを、文化財保護法に基づき日本国政府が指定した文化財を指す。
<お寺や神社、住居が、重要文化財に指定されるまでの流れ>
以下は、文化庁文化財調査官の長尾充さんによる重要文化財指定の解説です。
「建造物を重要文化財に指定するためには、綿密な調査が必要です。まずは地元での調査。大学の先生や建築士の協力を得て、報告書をまとめてもらいます」
「その報告書を基に、我々文化庁の調査官が現地調査や関連資料の調査をし、指定候補とするまでには1件につき調査から最低でも2年くらいを要する長丁場です」
「最終的には大臣が文化審議会へ諮問(しもん)し、答申をうけて指定を決定するという流れです」
その審査の基準は、各時代を代表するような用途・形態を持つ建築物であること。なおかつ以下5点のうち、いずれか1点を満たしているかどうか。
1)意匠的に優秀なもの
2)技術的に優秀なもの
3)歴史的価値の高いもの
4)学術的価値の高いもの
5)流派的または地方的特色において顕著なもの
現在、重要文化財に指定されている建造物の数は4607棟。そのうち、極めて優秀で、かつ文化史的にも意義深いものは「国宝」に指定されている。その数は現在266棟となっている(平成25年9月1日時点の数)。
ちなみに、文化財は市町村の条例によって指定することもできますが、国の重要文化財と二重の指定はできない。
<登録有形文化財>
文化財指定は重要文化財だけではない、登録有形文化財として残すという方法もある。以下は、文化庁文化財調査官の長尾充さんによる登録有形文化財指定の解説です。
「重要文化財は難しいかもしれませんが、所有者の残したい気持ちにこたえる制度として『登録有形文化財』があります」
「これは、より多くの文化財を保存していくことを目的に平成8年に創設されました。とても人気があって、現在建造物の登録は9250件。そのうち約半分近くは『住宅』です」
こちらに登録するためには、原則50年を経過した歴史的建造物であることと、以下の3点のうち、いずれか1点を満たしていることが条件です。
1)国土の歴史景観に寄与しているもの
2)造形の規範になっているもの
3)再現することが容易でないもの
「登録の手順ですが、まずは、地元の教育委員会にご相談ください。必要な資料を整え、文化庁の調査を経て、文化審議会で価値が認められれば登録されます。登録有形文化財は、建物を活かしながら残していこうという考え方です」
「そのため、内装の変更や設備の更新などの規制は、重要文化財に比べると緩やかです。ですから、修復してまちづくりに活かしたり、観光資源として利用する例も多くなっています」
というわけで、重要文化財も登録有形文化財も、造りが優れているだけでなく、歴史上の位置付けが審査のうえで大事になるようです。
参考・引用:個人宅も重要文化財にできる?意外と知られていない指定の基準とは
追記:
当会では、このような文化財指定も含めて、歴史的な建物を未来につなぐ活動をしていきたい、と考えています。
冒頭写真:綱島商店 蔵造りの家 重要文化財
撮影:村田賢比古
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