非営利任意団体/Rの会 2018年6月設立

きさらづ界隈通信|古都京都では歴史ある町家が、毎年取り壊されている

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古都京都の残念なできごと

「そうだ京都、行こう」というJR東海のキャンペーンがある、そこでは悠久の歴史の流れと文化がある古都として、京都を強くアピールしている。

 悠久の歴史に思いを馳せるような、忘れていたゆったりとした「時の流れ」を思い起こさせるような…そのような映像美で京都へと誘っている。

 一方そんな京都では、古都らしくないできごとが起きている。

京都では歴史ある町家がマンションに
 2018年夏、京都市内で最古級(室町起源)といわれる歴史ある町家が解体された。重要文化財級といわれていたが、登録はされていなかった。そして、取り壊された町家の跡地にはマンションが建つそうだ。


解体された最古級の町家「川井家住宅」
画像引用:https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20181127000046

京都市最古級の町家が解体消失 室町起源、保全強化も奏功せず
室町時代にまで起源をさかのぼれ、専門家が重要文化財級と評価していた京都市内最古級の町家「川井家住宅」(中京区西ノ京)が解体され、消失したことが26日までに分かった。

市は京町家保全継承条例を昨年に施行し、マッチング制度などを今年5月から導入して町家解体を防ぐ施策を強化してきたにも関わらず、貴重な町家の消失を止められなかった。

 ちなみに、京都ではこの町屋だけでなく、毎年のように歴史ある町家が取り壊されている。京都では『京町家保全継承条例』に基づき保存活用を目指しているといわれるが、それがうまく機能していないようだ。(費用と財源の問題か)

 京都は、日本の悠久の歴史と文化を残すまちとして名高い。それは日本国内だけでなく、海外でもおなじくである。たしかに重要な文化遺産が数多くあるのは間違いないが、それは特定の場所にある神社仏閣などに限られる。

 京都の普通の街並みには、古都らしい風情はほとんど感じられない。

 祇園など特定地域だけ風情は残されているが、伝建地区から外れた町家は地上げの対象となり、櫛の歯が欠けるように取り壊されてマンション化が進んでいる。

 現在、国は地方都市のマンション建設に補助金を支給するという施策を打ち出しているらしい。それと関係あるのだろうか。(地方創生の道筋がずれてないか)

 悠久の歴史と文化を誇る京都のこの様相は、日本全国、日本人の歴史や文化に対する姿勢を如実に表している、と言っても過言ではない。とくに日本人は歴史ある街並みに対してとても無頓着なようだ。違うだろうか。


京町家 小宿 nao炬乃座 別邸梅小路
画像引用:https://www.honda.co.jp/dog/travel/data/umekouji/

町家(ちょうか、まちや)とは
主に京都の職住一体型の住居形式です。建築様式としては「町家造り」と呼ばれます。平安時代中期ころより発展し、江戸時代の頃には現在残る形にほぼ近いものとなった。「まちや」と読む場合は町屋とも書きます。

一般的に、店舗としてみる場合は町屋と書きます。住居としてみる場合は、民家の一種であり、町家と書くことが多いです。

外観は、紅殻格子(べんがらこうし)と呼ばれる色の濃い格子、虫籠(むしこ)窓、犬矢来などが特徴的です。2階建てが多いですが、平屋や3階建てもあります。

町家所有者と行政のすれ違い
 京都では、上記した『京町家保全継承条例』に基づき、保存活用を基本にした対策をしているようだが、最終的な利活用の方法は所有者に委ねられている。なぜなら、建物維持費などは所有者の自助努力に任せているからだ。

 したがって、不動産、マンション業者が金を多く積んで所有者を抱き込んでしまえば、もはや解体を阻止する手段がなくなってしまう。

 上記した案件では、業者側は市との協議に応じ、建物解体を遅らせて「条件次第で別業者への売却も検討した」そうである。しかし市の仲介で10社ほどが関心を示したものの、転売は成立しなかった。市と業者側では意見のすれ違いがあった。

 京都府や市で買い上げてしまえばいいが、前例がないと無理なようだ。個人的には、行政が一旦買い上げて、それから保存活用を前提にして、企業または個人へ売却したらどうかと思うが、それもむずかしいのだろうか。

 ちなみに、市では業者側の提案(市による移築)に対し、未指定文化財への公金支出は前例がないとして、これも応じなかったそうである。


登録有形文化財の京町屋/フランス料理屋
画像引用:https://s.webry.info/sp/8mada.at.webry.info/201501/article_28.html

町家を売却解体した所有者の言い分
市は景観面などから街の公共財として保存を求める一方、所有者が建物維持費や税負担などの軽減を訴えても私有財産として自助努力を促された。文化財指定して公開保存する方法はあるが、元自宅に多くの人に踏み込まれることには抵抗感があった。

 所有者にもそれなりの理由や言い分がある。それを端的に言えば、行政からの支援もなく、建物の維持管理費が所有者の大きな負担となっていることである。

 なお、もうひとつの理由『元自宅に多くの人に踏み込まれることには抵抗感があった』というのは、なんとも理解し難いがいかに。

 歴史ある建物や街並みを遺すことは、長いスパンで考えれば京都の利益につながるはずである。京都を訪れる人が何を求めているか、それは言うまでもないことだ。理にかなっていて、それができないのは、悲しく切なくなるばかりである。

 最終的にはお金の問題になるが、京都に財源がなければ、国の支援や、一般企業からの投資を促す方法を本気で考える必要があるだろう。そうでもしないと京都らしさが失われてゆくばかりとなります。(ワコールは町家再生を手がけている)

 また町家の所有者がみずから稼ぐ手立てとなる方策や、それを支援するコンサルなども必要かもしれません。

 とにかく、日本の古都京都でこの有様ですから、ほんとに誰かが言っていた『美しい日本』はどこにゆくのでしょうか、と思わざるをえません。

 ちなみ京都では、非営利団体『京町家再生研究会』が、この問題に取り組んでいます。京町屋の存亡の危機を強く訴求したのもこの団体だった。町家の持ち主と購入者、賃貸人などとのマッチングも行っている。

京町家再生研究会
古都京都の街並みを守ろうと市民や建築家らが協力し、中心市街地の町家約8000軒を調査し、町家の存続状況をデータベース化する。2000年、「京町家情報センター」を発足。町家の持ち主と購入や賃貸を希望する人をつなぐ。

歴史ある建物や街並みの整備がされていない

歴史ある街並みはいずこへ
 日本には、イタリアのフィレンツェのように歴史ある建物と街並みがそっくり遺されているような街がない。ちなみに外人さんは、京都を日本のフィレンツェと勘違いしているそうだが、とても残念なことである。

 歴史ある街並みが遺されているのは、蔵造りの建物が多く遺されて街並みを形成している埼玉県・川越一番街ぐらいかもしれない。ほかには倉敷とか。

 なぜ日本の歴史ある街並みは失われたか、それは昔の建物は木造だから、という理由もあるが、明治以降の近代化が最大の要因であるに違いない。

 近代化もいいが、もう少しなんとかならなかったか。明治、大正、昭和と近代化、そして現代化が進んできたが、スクラップ&ビルドするばかりで歴史をストック(蓄える)するという概念がなかったようである。

 それにしても現在の街並みはどこに行っても、「味気がない、風情がない、情緒がない」の無い無い尽くしの街並みばかりである。あくまで個人的な意見であるが、大人になってから日本の街並みを美しいと思ったことは一度もない。

 日本にはかつて豊かな美意識があったはずだが、それがいまはまったく感じられない。現在の街並みは、ただただ虚無的な空間が広がっているばかりだ。

日本の美意識とは
日本の美意識は非常に多くの要素から成り立っており、それらが個々に独立しているのではなくお互いに関わりあって形成されている複雑なものである。

自然観や風土、宗教などにも影響を受けており、日本人自身でもこれをはっきりと定義・認識する事は容易ではない。

例/日本の自然観、和とおもてなし、無常、もののあはれ、風情、風流、 雅、幽玄、禅と悟り、 侘び寂び、渋い、粋、かわいいなど…。

外国人さん曰く
『来日するまで京都はフィレンツェのようなイメージだったが、祇園でも町家とビルがごちゃごちゃで統一感がない』(エリック・ルオン氏)

 上記したのは、外国人クリエーターが、京都について語ったシンポジウムでの発言だそうです。この意見には、多くの外国人が賛同したようです。

 日本の伝統文化の造詣が深いデービット・アトキンソン氏(新・観光立国論で日本の可能性を提唱)もおなじく、来日前は『京都は昔の街並みが残る美しい街だ』と思っていたそうです。ところがそうではなかった。

アトキンソン氏曰く
『欧米の感覚では、歴史ある古い街並みは保存されるのが当たり前であり、日本が誇る京都がビルやコンビニエンスだからけということが、理解できなかった』

 ちなみに、その後アトキンソン氏は、歴史ある町家を購入し復元して住まいにしています。なんだか外国人さんのほうが、日本の美しさを理解しているようです。

 そんな歴史ある町家に住まうアトキンソン氏のところにもマンション業者が地上げにやってくるそうです。やはりバブルなんでしょうか。

 それはさておき、日本の街並みに対する外国人さんの感じ方は、概ね共通していると思われます。だから『日本すごい!』なんて言ってる場合じゃありません。

 ごちゃごちゃ、混沌こそ日本だ、というのはなんだか悲しいと思いませんか。

いまこそフロー(流れ)からストック(蓄え)へ
 美しい日本、それを取り戻すのは簡単ではありませんが、そろそろスクラップ&ビルドではなく、ストック価値(歴史や文化)を見直す頃ではないでしょうか。

参考文献:新・観光立国論 デービッド・アトキンソン

おまけ/訪日外国人数の推移

2018年の年計は、前年比8.7%増の3,119万2千人となり、JNTOが統計を開始して以降、過去最多を記録した。


画像引用:https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/inbound/

コメント

  1. めるも より:

    川井家の近くに住むものです。
    お医者様のおうちですよね。立派なお屋敷がなくなって、どうなるんだろうと思っていたら、マンションの工事が始まる看板が出ました。
    しかし、今、その工事は止まっています。
    なぜなら、発掘調査が始まったからです。
    やっぱりなー。このうちなら出るでしょうと納得しています。
    来年の3月までは、発掘調査のようです。
    どんなことしてるのか、興味があるのですが、完全に隠してあって見えません。
    なんか出ちゃったんですよね。

    • Rの会 より:

      コメントいただき有難うございました。

      室町起源といわれる京町屋が、所有者さんの都合で
      解体されたことは、なんとも衝撃的でありました。

      これがある意味、日本の現状を表しているのかもしれません。
      しかし、なんともったいないことを、と思うばかりです。

      当方は地方の一市民ですが、歴史や文化などおかまいなしの
      疲弊した状態にあります。他の地方もおなじくと思います。

      したがって、せめて日本の古都である京都だけでも歴史と文化
      を未来に継承してほしいと切に願います。

      京都市民、行政のみなさまには酷なことかもしれませんが、
      ぜひよろしくお願いいたします。

      Rの会より

  2. 齋藤 より:

    川井家住宅の建築資材だけでも保存できないでしょうか。将来の復元のために、部材の保存が大事となります。そうでなくても、新材で、同じ建物でも何とかなりませんか。所有者の浅はかな考えで、こんなでは、ほんまにどうしようもない。もっと所有者が、確りしてないとだめです。