きさらづレトロ建築活性化委員会
レトロ建築を未来につなぐ
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きさらづ界隈通信|市民に力を パワー・トゥ・ザ・ピープル

当会は、歴史ある建物の再生(保存・活用)を目指し、活動を始めてから約半年が経ちました。しかし、いまだ成果らしきものは、これっぽちもありません。

それどころか、成果云々以前に問題が山積みする有様の昨今です。とはいえ、設立してまだ半年ですから、まー無理もないともいえますが。とにかく、これまでの活動のなかで強く感じたことは、建物再生をハナから諦めている感が強く漂っていることでした。

建物再生の話をすると、すぐに「所有者さんがー」「地主さんがー」「行政さんがー」「費用はどーすんだー」等々、これでもかという否定的意見が怒涛のごとく押し寄せてきます。たしかに、どれも正論であり、かつ事実でもあります。

しかし、個人的見解ですが、何事も活動してみなければ答えはでない、と思えてなりません。収益を目的とした企業であれば、それは無理筋でも、当会のような非営利活動は、企業や行政ができないことをやることに意義があると思います。

日本企業の活動手法に、PDCAサイクルというものがあります。Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)+S(標準化)という事柄を繰り返すことで業務推進の向上につながる、という考え方です。

主に品質管理の手法ですが、企業のみならず、政府、行政、学校など幅広く使われていて、その効能には信奉者も多いようです。

しかし昨今では、これではイノベーションは生まれないといわれています。なぜなら、Plan(計画)づくりに慎重なあまり、意思決定が遅く、また貴重な創造性も排除される傾向にあるからだ、といわれます。

シリコンバレーでは、PDCAのような管理を主目的とした手法ではなく、「デザイン思考」というものが主流となっているそうです。

デザイン思考を端的にいえば、まずは、やってみて(D)、確認と軌道修正(CとA)をしながら、大きな方向性が見えてから、初めて計画(P)が立てられるという考え方になります。

その根底にあるのが、「やってみないと分からない」という概念です。非営利活動には、このデザイン思考の方がしっくりするように思えてなりません。

かつてサントリーの創業者も言っていました、「やってみなはれ」と。

※ちなみに、PDCAサイクルは日本人が作ったそうです。(戦後、複数の欧米学者が提唱する手法を基に考案されたといわれます)

地方のまちづくりの行方はどこにある

パワー・トゥ・ザ・ピープルという大層なタイトルをつけましたが、たんなる思いつきであり、深い意味はありません。あしからず。

現在、少子高齢化の時代を踏まえ、未来のまちづくりに地方都市はいろいろと苦心している様子が伺えます。そこで、まちづくり成功事例と話題のコンパクトシティ、さらに建物再生の地域格差についてご紹介いたします。

市民と行政が一体となったまちづくり

川越市の事例

70年代ーー
川越のまちでは開発ムードが支配するなかで、市民は歴史ある建物の存在価値に気づき始めました。そして一部の有志たちが、町並みを保存する活動を始めました。

青年会議所から町並みを保存する景観条例の提案がされて、さらに伝建地区(伝統的建造物保存地区)の調査も行われましたが、建物所有者の同意が得られず、保存活動は一旦は棚上げを余儀なくされました。

80年代ーー
1983年、市民団体「川越蔵の会」設立。蔵の会には、多様な市民が参加しました。青年会議所OB、商店街関係者、建築家、学識経験者、市の職員などです。

そして、保存活動の機運は市民のあいだに広がり、やがて市民と行政が一体となって保存活動が進んでいくことに。その結果、国および県指定の都市計画道路の開発が変更されて、歴史ある建物と町並みが保存されることになりました。

川越の例でいえば、市民と行政が一体になったことが、現在につながるまちづくりの基礎を築いたといえます。簡単そうですが、当時は開発優先(いまでも地方はそうですが)の時代である。それを思うとよく保存の道を選んだと感心します。

<川越観光客入込数>
1982年/約150万人(蔵の会設立の前年)
2017年/約660万人(同年、ディズニーランド入園者数/約3000万人)

<川越市人口の推移>
1970年/約15万人
2015年/約35万人(埼玉県3位)

80年代当時、開発を優先した地方都市は、いずれも古い建物を壊し新しい商業施設やマンションを建設しています。そのような開発は、金太郎飴のようなものであり、どこにでもある似たような没個性のまちが出来上がりました。

その結果は言うまでもなく、やがて中心街の空洞化、商業施設の撤退、シャッター通りなど、どこの地方もこれまた金太郎飴となっています。

きさらづでもおなじく、90年代後半から2000年代初頭にかけて、市中心街の商業施設の撤退が続き、様相は一変しました。

その後きさらづでは、幸いというべきか、アクアライン暫定800円の恩恵をうけて新しい大規模商業施設やその他企業の誘致もあり、人口は少しずつ増加して現在に至っています。ただし、市中心街は衰退し、空洞化したままですが。

現在、きさらづでは、市中心街にマンション建設といういつか来た道のような動きが顕著となっています。つぎは商業施設の誘致でしょうか、そうなれば「コンパクトシティ」という流れにあることが、明確化になります。

そのとき、わずかに残された歴史ある建物は、どうなるか。いまがギリギリの瀬戸際かもしれません。なぜなら、街中の商業施設の建設は、例外なく古い建物を壊して建てられるからです。(駅前商業ビルにスーパーを誘致するか)

コンパクトシティとはなにか

コンパクトシティとは、地方の市中心街の活性化の切り札として考えられたようです。空洞化した市中心街に、新しい住宅(マンション)、役所、公共施設、病院、商業施設などを移設、または新規に建設します。

そして、郊外居住者の移動や、新規居住者を誘致し、人口の集約化を図ることで、郊外に無限に広がってきたインフラ事業を削減することができます。なんでも、引っ越し等には公的支援があるそうです。

コンパクトをコンビニエンスと言い換えても案外、的は外れていないでしょう。

人口減少を踏まえた、利便性と経費削減が、キーファクターとなったまちづくりといえます。一見するととても良さそうですが、若干気になることがあります。これもまた、ひな型に基づいた金太郎飴になりはしないか、という危惧です。

実際、コンパクトシティの成功例といわれた青森市では、中心街に大規模商業施設を建設し、同時に公共施設、マンション、生鮮市場などを集中させたそうです。

商業施設は、オープン当初は大変賑わい、年間600万人ほどの来場者があったそうです。しかし、それからわずか5年で累積赤字のため運営母体(第三セクター)が破綻しています。600万人で賑わった商業施設が破綻とはいかに。

なんだか、かつてきさらづで起きた出来事がデジャブのように思い出されます。

言うまでもなく、そごうのことですが、また大規模商業施設を作るのでしょうか、歴史は繰り返されるといいますので、なんら不思議でもないでしょう。

建物再生(保存・活用)には、なぜ地域格差があるか

地方によって、歴史ある建物の再生に対する姿勢はずいぶんと違いがあります。いったい、その違いはどこからくるのでしょうか。

上記で紹介した川越市は、80年代に建物と町並み保存に動きましたが、当時おなじような環境にあった茨城県土浦市では、開発を優先して古い町並みを壊して、商業ビルやマンションなどを建設したそうです。

それから数十年が経った現在では、川越市は全国有数の町並みを誇り、人も多く集めています。一方土浦市には、まるで存在感が感じられません。

そのような事を踏まえて、歴史ある建物への取り組み方の格差について以下にご紹介したいと思います。

きさらづの現存する歴史ある建物を比較事例としますが、けっして悪気があるわけではありません。予めご了承ください。現在輝いていないのは、これから輝く機会があるということです。

伝統的和風建築

埼玉県行田市 牧禎舎(まきていしゃ)
2013年度の助成金による改装を経て、イベントなどに利活用されている。

「ぎょうだ足袋蔵ネットワーク」公式サイト
http://tabigura.net/

栃木県足利市 築81年の和風建築
再生されてイベントなどの場として利活用されている。

足利市「つむぐつむぐ会」フェイスブック
https://www.facebook.com/tsunagutsumugukai/?rc=p

木更津市 富士見通りの和風建築
木更津港近くにひっそりと佇む歴史ある和風建築があります。住んでいるのか不明、修復や修繕はされていないようで、かなり劣化が進んでいます。


写真:cragycloud

看板建築

埼玉県川越市 大正浪漫通りの看板建築
川越では、蔵だけでなく看板建築も現役で利活用されている。

引用:http://d.hatena.ne.jp/Pulin/20120525/1337937272


引用:http://mytown.mizuho-re.co.jp/mz-kawagoe-c/43

木更津市 安室薬店
昭和4年建築。きさらづの至宝ともいえる看板建築。残念ながら利活用されていない。建物自体も劣化が見てとれる、修復や修繕の必要性が高くなっている。

写真:cragycloud

木更津市 吉村商店 菓子卸業
昭和初期の建築。外壁をタイルで装飾した看板建築。現在、菓子卸業を営んでいる。

蔵造りの建物

埼玉県川越市 川越一番街
蔵造りの建物が棟続きで連なり、その存在感を遺憾なく発揮している。

引用:http://www.kawagoe-kankou.net/kankou/ichibangai/

木更津市 ヤマニ綱島商店
きさらづでは数少ない国登録有形文化財に指定されている。せっかく取得した文化財指定ではあるが、その存在感や魅力が周辺環境により存分に発揮されていない。店内は江戸時代の風情が色濃く残っているが、現在は利活用されていない。今後は、周辺環境にデザインモードのような規制を条例で定めないと、稀少な建物が埋没してしまうかもしれない。

写真:masahiko murata

銭湯建築

香川県直島 直島銭湯(アーティスト大竹伸朗)
一般的な歴史ある建物の保存・活用とは少し違うが、アートで蘇った銭湯建築。

引用:http://benesse-artsite.jp/art/naoshimasento.html

木更津市 人参湯
昭和27年建築。きさらづだけでなく、周辺地域でも残されていない昭和の銭湯建築。宮造りで建てられた希少な存在感を放つが、建物の劣化が進んでいる。

写真:cragycloud

冒頭写真:木更津市 綱島家住宅
ヤマニ綱島商店さんの別宅だそうです。現在に遺る風情ある伝統的和風建築として稀少な建物。
撮影:cragycloud
参考文献:「伝統を今のかたちに」後藤治(白揚社)

蔵のまち川越は、どのようにしてできたか。川越のまちづくりに多大な貢献をしてきた市民団体「川越蔵の会」より講師をお招きして、基調講演とシンポジウムを開催します。まちづくりの興味深い話が聞けると思います、ぜひご参加ください。

<Rの会主催>
まちづくりシンポジウム/川越蔵の会(基調講演)
開催日:2018年12月9日(日)13:00〜17:00
会場:きさらづみらいラボ(木更津市市民活動支援センター)
参加費:500円(定員80人、申込制、メールかFAXでお申込ください)
mail: info@r-nokai.com FAX: 0438-22-3501

参加費は、開催当日にお支払いください。
参加申込制は、なにかとお手数ですが、よろしくお願いいたします。
以下の問い合わせからでも申込できます。
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